AIエージェントが変える医療現場の未来――薬局から始まるAI革命

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医療業界のDXはもはや避けられません。しかし、現場では多くの課題が立ちはだかります。薬剤師の負担増や新システムへの抵抗感を乗り越え、誰もが簡単に使えるAIエージェントで医療の質を高める挑戦が始まっています。(株)MG-DX代表 堂前が語る薬局から始まるAI革命とは。その可能性と展望に迫ります。

現場で立ちはだかるDXの壁と医療業界の課題

医療業界におけるDX推進は避けられない潮流となっています。しかし、その道のりは平坦ではありません。経営陣が意欲的にDXを進めようとしても、現場の薬剤師やスタッフからは「新しいシステムにはついていけない」「これまでのやり方を変えたくない」という抵抗の声が上がるケースもあります。私自身もまさにそうした経験をしてきました。

   堂前 紀郎     (株)MG-DX 代表取締役社長  
 2003年サイバーエージェントに新卒入社。広告事業やAI事業で成果を上げ、2020年に調剤薬局のDXを推進する株式会社MG-DXを設立、代表取締役社長に就任。オンライン調剤サービス「薬急便」の提供を通じて業界のDXを支援している。
堂前 紀郎  (株)MG-DX 代表取締役社長
2003年サイバーエージェントに新卒入社。広告事業やAI事業で成果を上げ、2020年に調剤薬局のDXを推進する株式会社MG-DXを設立、代表取締役社長に就任。オンライン調剤サービス「薬急便」の提供を通じて業界のDXを支援している。

この背後には、長年培ってきた業務フローやノウハウが否定されるのではないかという不安があります。また、新たなITツールやAIシステムの導入に伴い、操作方法の学習や適応への負担が増えることも大きな懸念材料です。特にITリテラシーが高くないスタッフにとって、デジタル化は戸惑いとストレスの原因となりがちです。

これは医療業界に限った話ではなく、例えば、紙ベースで行っていた経費精算がデジタル化されることで、スマートフォンやパソコンの操作に慣れていないスタッフは大きな壁にぶつかります。さらに、経営陣が現場の声を十分に聞かず、一方的にシステム導入を推し進めるケースも少なくありません。このような状況では、せっかくの投資も無駄になりかねず、DXの真の効果を得ることは難しいのです。

薬剤師の負担を軽減するAIエージェントの導入効果

薬局の現場では、待ち時間の長さや受付処理の煩雑さ、薬剤師の説明が分かりにくいといったクレームが日常的に発生しています。特に高齢者や体調不良の患者さんが多いため、小さな不満が大きな問題に発展することもしばしばです。

さらに、厚生労働省のルール改定により対人業務の重要性が高まり、調剤などの対物業務中心ではなく、患者さんへの健康相談や継続的なフォローアップの強化が求められています。その結果、一人ひとりの薬剤師の負担は増え、人手不足や過重労働が深刻化しているのです。

こうした課題を解決するため、当社はAIエージェントを活用した接客支援ソリューション「薬急便 遠隔接客AIアシスタント」の提供を開始しました。

具体的には、受付業務や必要な案内をAIが担当することで、薬剤師が専門的な業務に専念できる環境を整えました。AIエージェントは、患者さんとの対話を通して、処方せん受付、保険証やお薬手帳の確認、よくある質問への回答などをスムーズに行います。

その結果、受付までの待ち時間の短縮や業務効率化が実現でき、患者さんからのクレームの減少や、新たなサービス提供の機会創出が期待できます。

さらに、薬剤師が患者さんとのコミュニケーションにより時間を割けるようになり、サービスの質の向上や新しい価値の提供が可能に。このようにAIエージェントの導入は、薬剤師と患者さん、双方にとって大きなメリットをもたらすのです。

「誰もが簡単に使えるAIエージェント」を目指すUX設計

当社は「世の中を本気で良くする薬局に役立つ」というビジョンを掲げていますが、これからはAIエージェントの活用が大きなポイントになってくると確信しています。技術が高度化するほど、ユーザーインターフェースの簡易化が求められます。専門知識がなくても使えるAIエージェントこそが、医療の質を底上げする鍵になると考えています。

過去に導入された無人受付やセルフレジでは、操作が複雑で使いづらいと感じられ、特に高齢者から敬遠される傾向がありました。その結果、せっかくのシステムが活用されず、従来の有人対応に戻ってしまうケースも多く見られます。

この課題を解決するため、「遠隔接客AIアシスタント」のUX設計では、ユーザー目線に立った使いやすさを追求しています。
具体的には、画面デザインに大きな文字やわかりやすいアイコンを採用し、操作手順を簡潔にまとめています。
また、音声ガイドや動画による操作説明を取り入れることで、初めて利用する人でも安心して使えるよう配慮しています。

さらに、AIが利用者の表情や操作の様子を感知し、困っていると判断した場合には、自動的に有人対応に切り替える仕組みの導入を進めています。これにより、操作に不安を感じる利用者でも適切なサポートを受けられます。

多言語対応も重要な要素です。外国人患者が増加する中で、言語の壁を超えて円滑にコミュニケーションを図るために、AIエージェントが複数の言語で対応できるようにしています。
これらの取り組みにより、利用者にとって使いやすく、親しみやすいAIエージェントを実現。利用者の満足度が高まることで、システムの利用率も向上し、結果的に薬局全体の業務効率化とサービス向上につながります。

遠隔接客事業部の設立背景と業界からの反響

2024年11月に「遠隔接客事業部」を新設しました。これは医療現場における人手不足や業務効率化のニーズに応えるため、AIエージェントを活用した遠隔接客サービスを専門的に推進する部隊です。

設立後、想像以上の反響があり、大手チェーンはもちろん、中小規模の薬局からも多くの問い合わせが寄せられています。
特に、人手不足に直面する薬局業界からの関心が高く、遠隔での服薬指導やAIを活用した患者さんへのヒアリングサポートの需要が急速に拡大。専門家がいない地域でも質の高いサービスを提供できることに加え、OTC薬の遠隔販売の解禁なども追い風となっています。

また、調剤報酬改定によって薬局がコスト削減を検討せざるを得ない状況が生まれており、業界全体が直面する課題である、人手不足や業務の非効率性に対し、従来の方法に限界を感じる声が多く、AIエージェントの活用がその解決策の一つとして注目されているのだと感じています。

今後はさらに精度を向上させるため、医療データのビッグデータ解析にも注力していく予定です。また、業界全体での情報共有を進め、勉強会の開催を通じて横のつながりを強化していきます。遠隔接客が業界のスタンダードとなる日は、近い将来に訪れると確信しています。

医療DX参入から5年――得られた教訓とこれからの展望

当社が医療DXの領域に足を踏み入れてから、早くも5年が経過しようとしています。最初に調剤薬局業界にソリューションを提供した際は、業界特有の規制や慣習の壁、経営陣と現場の温度差などによって思うような成果を上げられない時期もありました。

1年目は試行錯誤の連続で、業界の厳格なルールや現場の抵抗感に苦戦しました。しかし、DXという言葉を過信せずに、お客様の売上を上げることを価値と定義し、プロダクトを改善してきました。その結果、3年目に入る頃から徐々に手応えを感じ始めました。業界全体でデジタル化の必要性が認識され始め、経営者層からの関心も高まってきたのです。

AIエージェントが拓く未来――薬局から広がる社会全体への影響

薬局におけるAIエージェントの導入は、業務の効率化やサービス向上にとどまらず、社会全体のデジタルトランスフォーメーションを加速させる可能性を秘めています。この成功事例を足掛かりに、医療機関や公共サービスをはじめとするさまざまな分野での活用が期待されています。

特に当社は、「誰もが簡単に使えるAIエージェントで、日本の医療の質を高める」ことを使命としています。将来的には、2035年までに1,000万世帯に「薬急便AIアシスタント」を配備し、安心を生み出す社会を実現することを目指しています。高齢者の一人暮らしが増加するなか、日常生活のサポートや緊急時の対応を担うAIエージェントは、健康管理や服薬指導、生活リズムの把握など、家庭内での多岐にわたる活用が期待できます。

また、親世代の医療介護問題をAIで解決し、若者が安心して働ける社会づくりにも力を注いでいきます。
働き盛りの世代が介護や医療の不安から解放されることで、生産性の向上や社会全体の活力にも寄与するでしょう。AIエージェントが親世代のサポート役となることで、家族全体の安心感が高まります。

サイバーエージェントでは「新しい力とインターネットで日本の閉そく感を打破する」というパーパスのもと、技術開発と社会との対話を重視していますが、当社もAIエージェントが「新たな協力者」として社会に受け入れられ、人々の暮らしをより豊かで安心できるものにする未来の実現にむけ、取り組んでいきます。

医療現場のDX推進は、最先端の技術だけではなく現場で働くスタッフや患者さんのニーズや想いに寄り添う姿勢が重要です。AIエージェントがもたらす未来は、決して遠いものではありません。私たちは現場の声を大切にしながら、誰もが安心して利用できるソリューションを提供し続けてまいります。
 

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